民藝旅 / MINGEI

民藝旅 vol.1 山陰・愛媛編 \10日目/【鳥取県 鳥取市】後編

 


\前回のおさらい/

 

鳥取のお医者さん、吉田璋也さんが「美による社会改革運動」という志のもと、「新作民藝運動」を昭和6年にはじめる。

吉田さんプロデュースの元、様々な手仕事の生活用品に指導が入り、鳥取のものづくりは発展。しかし、時代の流れとともに、木工など一部の手仕事の現状は厳しいものとなる…

 

 

*  *  *

 

 

3. これは民藝にはいる、はいらない? 民俗学と民藝のちがい

 

もじゃ
もじゃ
刃物とか玩具は民藝品に入らないと、2019年4月号「美術手帖」の民藝特集で読みました。

日用品でも民藝に入らないカテゴリーがあるのですか?

 

木谷様
木谷様
柳自身は、土人形なども民藝の範疇として取り上げていますから。単純に、郷土玩具がすべて民藝品じゃないというわけではありません。

しかし、郷土玩具がすべて柳が認めるような美しさがあるのかというと、決してそうではなくて。やっぱり柳の目で見て「これは美しいんだ」ということを言ったものが民藝となったんです。

 

もじゃ
もじゃ
では民藝品にはいるのは、柳宗悦が見て、美しいと言ったもの。

 

木谷様
木谷様
まずは、そこですね。まずは、柳の目というのが一番

 

もじゃ
もじゃ
ということは、文章にあった「玩具は民藝から外れた」というのは、ちょっと言い過ぎということですかね。
※後日引用文を掲載いたします※

 

木谷様
木谷様
ちょっと、確実では、全てではありませんね。雑誌「工芸」でも郷土玩具を1回か、2回か取り上げておりますし。そういったものも、民藝の範疇として取り上げていますから。

大正の頃からは、郷土玩具をコレクションしてくという世界が始まるわけですよね。

それからもう1つ、同じ頃に何が始まるかというと、「民俗学」です。

 

もじゃ
もじゃ
民俗学は、そんなに新しいんですか。

 

木谷様
木谷様
はい。だいたい明治の終わり、大正の初めから渋沢栄一という方によって、民俗学が始まりました。民具というものですね。

しかし、民具は民藝と目的が違っています。

民具と民藝はどう違うかというと視点がちがうのです。物だけを見ると同じものに見えるかもしれませんが、全く違う見方をしているわけです。

なぜ民具を調査するのかと言いますと、鎌倉時代や、江戸時代という歴史は、政治史や経済史出会って、民衆の歴史とは少し違うんですね。しかも、民衆の歴史は文字に残されないことが非常に多いのです。

ですから、民具などを調べることによって、日本の民衆の歴史を調べることが民俗学です。
そして、民俗学はだんだんと深化して、日本民族はどこからきたのか、という話にもなります。

 

もじゃ
もじゃ
時代をどんどん遡るのですね。

 

木谷様
木谷様
はい。かつての日本の起草文化とはなんだったのか、とかね。起草文化というのは民衆の中にずっと残っていくのです。起草文化とは何なのかと考えていくのが民俗学であって、歴史学に非常に近い。

民俗学とは、物から過去を調べていく実証学です

ところが、柳のおこなった民藝というのは、美学です
なにが美しいか、美しくないかという話なので、美学の世界なのです。

ものはかぶるかもしれないけれど、確かに、視点はまったく違います。

つまり、刃物や玩具だから入らないという、カテゴリーで分けられているわけじゃないのですね。あくまでも柳先生の美学。視点が全然違う話なんですね。

 

もじゃ
もじゃ
では…建築が民藝に入らない、というのは?

 

木谷様
木谷様
建築は民家、ほぼ同じ頃に、民家論というのが始まるんですよ。

 

もじゃ
もじゃ
また違うものなのですね。

 

木谷様
木谷様
はい。(民藝のはじまりと)同じ頃に、民俗学のグループの一部が中心となって考現学を始めるます。今和次郎さんなどが中心となって始めるのが「民家論」です。茅葺民家などの民家を調査していくものです。

民藝運動の初期には、民家の方も少し手を出すのです。しかし、民家論にかかわる方達は建築の専門家が中心で、また民藝運動としては工芸という範疇から、柳もなかなか出ませんでした。ですから、建築や民家に関して、柳はあまり調べませんでした

ただし、柳自身は建築のデザインをしています
例えば、日本民藝館は柳と濱田によるものですし。一番最初の日本民藝館という名前で造られたのは、上野の国産品奨励博覧会で、開かれた昭和3年の民藝館。移築されて三国荘(みくにそう)という名前になりますけどね。

 

 

 

 

4. いま民藝を導く人は? 北欧と鳥取の生活美術

 

もじゃ
もじゃ
なるほど…

ところで、民藝のいまを導いている方というのは、いらっしゃるんですか?

 

木谷様
木谷様
なかなか、難しい質問ですね。
うーん、今は新しくプロデュースしていくということは非常に難しくてですね。

工業デザイナーの柳宗理さんが、昭和31年ごろ鳥取で新作指導をおこないました。吉田璋也さんが、これからは民藝派の工業デザイナー達も、こういったデザイン運動に入ってこなくちゃいけないんだと、いうことを唱えています。それに応えるようなかたちで、柳宗悦さんの息子で工業デザイナーの宗理さんが鳥取へやってきて、デザインをしてくということがありました。

そして、1990年から2001年にかけて、柳宗理ディレクションによる、因州中井窯のシリーズというものが作られました。もうひとつは、出西窯です。これが、若い人たちの民藝ブームに火をつけたと言っても良いと思いますね。

 

もじゃ
もじゃ
その、宗理さんもお亡くなりになられた後というのは…

 

木谷様
木谷様
そうですね、鳥取では、白岡崇さんというプロダクトデザイナーと一緒に製品を作る試みをこの間までおこなっていました。ただ、値段がね。家具の生産は特に難しいので、値段もすごく高くなるので、厳しいところもあります。

しかし、そういった試みはいま、ここでもおこなっています。その動きが、ヘルシンキ。ヘルシンキで2012年に展覧会があったんです。

 

もじゃ
もじゃ
え!フィンランドって、鳥取とすごく近いなと感じて。今回いろいろな場所を見て思っていたんです。

 

 

木谷様
木谷様
そうです、そうです。これは、その時に作ったカタログです。日本語のカタログよりも英語のカタログの方が先にできていたんですよ。

フィンランドで、2012年に、World Design Capitalという世界デザイン都市というプロジェクトがあり、その時の日本ブースは100平方メートルあったんです。それを全部、吉田璋也さんでやってくださいということになりました。

 

もじゃ
もじゃ
すごい!

 

木谷様
木谷様
それで吉田さんの古いものを70%展示し、かつ、白岡崇くんがデザインして鳥取の人たちが作った新しいものを30%くらい展示をしました。それは、とても評判が良かったですね。

 

もじゃ
もじゃ
フィンランドと日本、鳥取は、ものづくりや、諸々の雰囲気がすごく似ているなと。

 

木谷様
木谷様
フィンランドは生活デザインなんですね。それというのは、Arts and Crafts運動が元になっているんです。

 

もじゃ
もじゃ
イギリスの、ですね。

 

木谷様
木谷様
ええ、イギリスの。

バーナード・リーチさんと富本憲吉さんが、日本でArts and Crafts運動のようなことを起こしました。そして、バーナード・リーチさん自身が言っています。「自分たちがやったArts and Craftsが民藝として日本に大きく花開いているのに驚いていた」という趣旨の文章で。

柳さんはArts and Crafts運動と一線を画して、私は関係ないという言い方をしています。しかし実際には、柳はそれから影響を受けたのであろうと。

柳の民藝運動は日本のArts and Crafts運動だといって良いと思います。そのことについて、私も論文を書いています。

 

もじゃ
もじゃ
鳥取もフィンランドも、Arts and Crafts運動から影響を受けた生活美術が根付いているから、近しく感じたのかもしれないな… )

 

 

 

 

 

5. 民藝に興味がある人にオススメする「はじめの一冊」

 

もじゃ
もじゃ
日本民藝館で「民藝四十年」を勧めていただき読んでいるのですが、はじめの一冊としてはハードルが高いと感じているんです。

「これ、ちょっと読んでみたらどう?」っておススメするとしたら、どんな本がオススメですか?

 

木谷様
木谷様
「民藝の教科書シリーズ」が良いんじゃないかなぁ。

 

もじゃ
もじゃ
わぁ、可愛い本。これは見やすいですね。

 

木谷様
木谷様
これは、見やすいです。
いまの民藝について、こういうふうに作られていますよっていう。かつての民藝についてではなくて。

 

もじゃ
もじゃ
そうなんですか。

 

木谷様
木谷様
これが1番わかりやすいと思います。
そして、鳥取のいまは、イラストレーターの安西水丸さんが書いた本
安西さんの目で見た民藝ですね。これがわかりやすいかと。

 

 

 

 

6. 地方性の消滅と流通

もじゃ
もじゃ
生活様式が西洋化して、家や服が、かなりフラット(均一化)になってきて。民藝などの地方性が、だんだんなくなってきているように感じるのですがいかがでしょうか?

 

木谷様
木谷様
だんだんなくなっていますね。材料なども、地方の土地で取れる材料だけじゃなくて、流通しますから。

そもそも柳の収集したものが、なぜ、明治の中頃までのものなのか。
鉄道ができるんですよ。日本に鉄道網が完全にできて、物流が始まったのです。

 

もじゃ
もじゃ
なるほど!

 

木谷様
木谷様
それまでの物流は、北前船などの船が中心なんです。ところが鉄道ができることによって、外産地の物などが、鳥取にどんと入ってくるわけです。

外産地のものっていうのは、値段も安かったり。大量生産をしていますから。地域の手仕事というものが淘汰されていくんですね。

さらに現在はグローバル化していき、ベトナムやタイで作った家具などが、日本に溢れているわけですよ。

 

もじゃ
もじゃ
民藝の特性に「廉価なもの」とありますが、100円ショップで有田焼が売っている時代に安価なものって言われたら、もう、どうしようもないと思っています。

 

木谷様
木谷様
大事なことは、手仕事であるということが、1つであると思いますね。手による仕事であるということですね。いろんなものが、変わっていきます。

ただ、やっぱり、地域性というものを大事にしていかないと。グローバルなものばかりではダメですよ。

 

もじゃ
もじゃ
つまらないですよね。

 

木谷様
木谷様
やっぱり、地域にあるものから発生していくものが、美しいですよ。

 

 

 

 

7. 鳥取民藝美術館の使命、役割とは

 

もじゃ
もじゃ
最後です。鳥取民藝美術館の使命、役割というものは?

 

木谷様
木谷様
吉田璋也が考えていたような、民藝による生活の美しさ、というものを多くの人に分かち合うためにあると思いますね。

それはどんなものかっていうとね、それは、きっと、とても100円ショップで買えるようなものじゃなくて、いや。100円ショップの中に、実はあるのかもしれない。そういったものを見分ける目を、この民藝美術館のものを見て養ってもらうということが1番の大きな役割ですし。

実際に買って、使ってもらえるように…

 

もじゃ
もじゃ
生活の美しさを見る目を養っていただいて、品物を流通させて…

 

木谷様
木谷様
それを、使ってもらうと。

 

もじゃ
もじゃ
同時に、デザイナーさんとも、新しいものの形を探っていくと。

 

木谷様
木谷様
はい。新しいものを作っていこうということを、いま、していますね。

 

もじゃ
もじゃ
あぁ、なんか、ほっとしました。すごく、嬉しい答えが聞けた。ありがとうございます。

 

木谷様
木谷様
新しいものを作っていこうとしている民藝館ってなかなかないですけどね。というか、ここだけだと思いますよ。

 

 

*  *  *

 

(モダニズムと民藝については今回割愛します。)

 

*  *  *

 

 

8. 君は、ここを見たのか。

 

 

木谷様
木谷様
これが、大事なんですよね。この、柳の書。

 

もじゃ
もじゃ
これ、読めなかったんです。なんて読むんですか?

 

木谷様
木谷様
見しや茲(ここ)を、指すや都を。

人はね、都の方向を目指して行こうとするわけです。

けれども、都というのはどういう意味か。例えば、浄土とは何か、とか幸せとは何かとか。そういうね、都を指そうとする。悟りとは何か。仏の道とはなにか。

しかしね、悟ろうと思えば思うほど、悟りはどんどん遠のいていくし、浄土も遠のいていく。思えば、思うほど。そうではないだろう。見しや茲を、ここをみたのかという

 

もじゃ
もじゃ
茲を見たのか…?

 

木谷様
木谷様
あなたの悟りや、あなたの幸せというのは、私の中にはないわけであって。そっちにもないんですよ。都にもないんですよ。どこにありますか?

 

もじゃ
もじゃ
自分の中ですか?

 

木谷様
木谷様
そうです。自分の心の中にしかない。ここを、見たのかとうわけですね。

 

もじゃ
もじゃ
深いっ!

 

木谷様
木谷様
チルチル・ミチルが青い鳥を求めて森をさまよったけれども、幸せの青い鳥はいないんですよ、森にはね。でも、うちに帰ると、幸せの青い鳥がいたじゃないですか。

 

もじゃ
もじゃ
あれ!そういう話か!

 

木谷様
木谷様
これは、吉田璋也さんが大事にしていた書です。
そして璋也さんは、「見しや茲を」にもう一つ、別の解釈をするわけです。

京都にあるものや雅なものもいいけれど、地元鳥取にこんないいものがあるのに、見たのかとだからね、もっと広く言えば、日本を見たのかという話になるわけでしょう。

だから作り手にとって言えば、地域にあるものを見て、地域の特徴を活かしながらデザインして製品として作っていく

 

もじゃ
もじゃ
はぁ〜…これは大事だ。

 

木谷様
木谷様
大事です。そんなところで、ゆっくりとご覧になってください。

2階に璋也さんが蒐集したものの展示と、「民藝入門という本がありますから。璋也さんが自分が蒐集したコレクションをわかりやすくまとめた本です。

 

もじゃ
もじゃ
読みたいです。

 

木谷様
木谷様
今は…でも…まぁ…

 

もじゃ
もじゃ
言葉遣いが違いますか?

 

木谷様
木谷様
Amazonにしかない。

 

もじゃ
もじゃ
Amazonにしかない!

 

木谷様
木谷様
まぁ、まぁ。これに載っているものが上に展示してあるので、2階もゆっくりご覧ください。

 

もじゃ
もじゃ
ありがとうございます。貴重なお時間を、ありがとうございました。

 

 

*  *  *

 

 

鳥取民藝美術館 常務理事の木谷様、お忙しい中、貴重なお時間とお話をいただきありがとうございました。

 

次回、#民藝旅 vol.1 山陰・愛媛編 まとめです。お楽しみに!

 

\いつも温かい応援ありがとうございます/