民藝旅 / MINGEI

民藝旅 vol.1 山陰・愛媛編 \3日目/【鳥取県 倉吉市1】

4月10日水曜日、くもり雨。

1週間のレンタル車旅、はじまり。最初の目的地は、鳥取県倉吉市。

ツイッターとディレラボでお世話になっているヨネノさんのご紹介で知り合った、
鳥取のWebデザイナー小島さんが倉吉を案内してくださるのだ。

中学高校で、先生に口すっぱく「インターネットで出会った人に会っちゃダメ」と言われたけれど、インターネットで出会った人にたくさん助けてもらっている。

10時すぎ。
小島さんの事務所に到着。

小島さんは、物静かで穏やか。例えるなら、6月の苔。
瑞々しくて、ひんやりしているのに、温かい感じだ。

日本列島を寒波が襲った、この4月10日。
山陰地方・日本海を抱く鳥取県は極寒だった。小島さんが炬燵のスイッチを付けて、どうぞ、とホットコーヒーをいれてくれた。

ぶあつい座布団と、毛布生地のラグ。ふかふかだ。
あったかグッズに包まれて。心がゆるんで足が伸びた。

小島さんはまず、鳥取県の特産品を紹介してくれた。
「大山牛乳」と「いぎす」、そして「とうふちくわ」だ。

実は、とうふちくわは、前日のドライブの後、伊吹ちゃんからオススメいただいて、夜食にむしゃむしゃ食べていた。蒸し、焼き、ネギ入りと売っていて、これは蒸し。
味は、豆腐とちくわを混ぜた、そのまんまの味だった。おやつに最高。

大山牛乳も、倉吉に来る途中にコーヒー牛乳をごくごく。んまい。

残るは、「いぎす」という食べ物。
海藻を固めた寒天…のようなものらしい。美味しいのだろうか。

小島さんは、ゆったりと鳥取の地理や、歴史について話す。
西の大山と港、中央の農業、東の城下町。

そして、この倉吉は大阪淀屋が再建するキッカケとなったという、ヒストリア。

倉吉の街について、少し親しくなったところで、散策に出た。

あいにくの雨だったけれど、どっしりとした白壁の土蔵の街並みが新鮮で。
好奇心がシュワッと弾けるようだった。

ここは、ケーキ屋さん。倉吉は若い人たちが集まり、お洒落スポットになってきているらしい。

 

 

倉吉といえば、白壁、黒壁、赤瓦。カニの模様かな…?

 

土人形の産地としても有名。こいつ、夜中に動くと思う。

 

人面犬のお仲間。違うお店の軒先に飾られていました。土人形、大切にされているみたい。

 

倉吉は蔵の周りに水路が巡る。雨降りのため、あまりいい写真が取れなかった。
(明日、戻ってこようかな。)

蔵を間仕切りにした店舗。蔵だから、天井が高くて、骨組みがぶっとい。

 

綺麗な街、おしゃれで清潔な道。

とあるお店に入った時、蔵の内側を見た。
中庭がついていたり、はたまた、ちょっと“千と千尋チック”だったり。

サビ萌えにはたまらない。Good サビサビ。

 

歩き回っているうちに、時刻は13時。小島さんがオススメのお店に連れて行ってくれた。
メインストリートにあるのに、入口がさりげないから、絶対に見つけられない。穴場。

「百性料理よね」営業時間は11:30〜13:30。2時間だけシェフになる、農家のお父さんの店。

 

お店に入ると、常連さんらしき人が2人。ラジオからは昭和の歌謡曲。メニューもざっくり。小島さん一押しの、定食500円を頼んだ。

 

菜っぱのお浸しの後、出てきたのがコチラ。

 

ちょうどいいサイズのオムライス、デミグラスソースがけ。

 

と、手作りハンバーグ、エビフライ、サラダ、ホウレン草のお浸し。

多い。

「赤字定食だぁ」ぶっきらぼうだったお父さんが笑う。
自分で作っているから、お野菜たっぷり。お米も自家製。さすが農家食堂。

何が出てくるかは、お父さんのその日の気分。蓋を開けてのお楽しみ。
地方の魅力がギュッと詰まった良店だった。

(倉吉を訪れたら、ぜひ。)

 

 

*  *  *

 

 

お腹も膨れたところで、街歩きを再開。
本日1つ目のメイン、倉吉淀屋へ。

施設の職員さんが、情緒たっぷりに淀屋の歴史を語る。

「淀屋といえば、大阪。しかし、あの大阪淀屋は一度、取り潰しにあっているのをご存知でしょうか?

当時、参勤交代等で大阪淀屋に多額の借金をしていた、財政難の大名。そして幕府。
商いと貸付けで富を築き、強大になりすぎた淀屋を恐れた幕府は、借金を踏み倒した挙句、全財産を没収したのです。

しかし、先見の目があった淀屋は、取り潰しを予測して、密かに勢力を鳥取の倉吉に移していました。そして、大阪淀屋が取り潰された後、この牧田家米と綿の商いで体制を整え、大阪へもどり「多田屋」として再業を果した。その後、名前を「淀屋」と改め、ある日、忽然と姿を消すのです…噂によると、討幕運動に全財産をつぎ込んだとか、なんとか…」

大河ドラマを1シリーズ観たような、壮大な歴史ロマンの物語。
語る職員さんの言葉に、この土地への愛がにじむ。

 

日本海の小さな町と思っていた倉吉が、実は日本の中枢を揺るがす鍵になっていた。
蔵あるところに宝あり。この街には、まだ秘密がありそうだ。

 

 

*  *  *

 

 

次の目的地へと歩いていると、突然着物姿の男性に呼び止められる。
戦国時代なら武将レベルの強面と低声。背筋がこわばる。

聞いていないのに、着物武将は、町の歴史について話し始めた。逃げられない。
ここはRPG(ロール・プレイング・ゲーム)の世界かな。

着物武将は、見た目が怖いけれど優しかった。この街は城下町だったことを教えてくれた。

「道を見てください、道路が黄色なら町人の区画。黒色なら武士の区画。ちょうどここは町人と武家の住まいの境目なんです。」倉吉暮らしの小島さんも知らない、コア情報。

やっぱりRPGみたいだ。

 

 

*  *  *

 

 

着物武将にお礼を述べて、ようやく最終目的地についた。
山陰民具」創業100周年の古美術店。

古い皿や壺、ガラス細工に置物。所狭しと積み上げられている。
ちょっとした魔法道具なんかもありそうな、不思議空間。

お邪魔します、と声をかけて入る。
すると「いらっしゃいませ」と小さな声が聞こえた。しかし、人影は見えない。

狭い通路を進んでいくと、「いらっしゃいませ」もう一度か細い声。
ハッとして右を見ると、おばあさんが正座していた。(正直、肝が冷えた。)

挨拶をして、お店を見て回る。
さすがに、古美術だけあって、お値段はピンからキリまで様々。
その中で、2つの蕎麦猪口が気になった。

同じ柄なのに、大きさや図柄が微妙に違うのだ。

古いほうは、素敵なカン(釉薬のヒビ模様)が入っていて、松模様はしなやか。
新しい方は、少し大きくて松模様は直線で記号的。

柳先生の「昔は美しいものがあった」という言葉が頭をよぎった。
もしかして、こういうことだろうか…

 

蕎麦猪口を戻して、店内を回っていると、「お茶をどうぞ」と声がかかる。
「お構いなく。」と返事をしたけれども、すでにお茶が準備されていた。

では、遠慮なく、と言うことで、囲炉裏の前に座った。
お茶を入れてくださったのは、店主のお母様。90歳くらいだそうだ。
井戸水を、鉄の茶釜で沸かしたお茶。そして、柚子皮の砂糖漬け。

店主とお母様は、この町の歴史から話してくれた。もちろん、淀屋物語だ。
続いて、町の産業や暮らしについて。

 

山陰民具さんに聞いた、倉吉のこと

<倉吉は鍛治師と農業の城下町>
▶︎鍛治師が作っていたもの
・(室町時代〜江戸時代)刀鍛冶
・(平和な時代)農具、包丁、鎌
・(明治時代行こう)千歯こき

▶︎農業と蚕の生産

▶︎牛肉を食べる文化は戦後から

▶︎女性の嫁入り道具は、布団三種
・一般家庭は木綿、お金持ちは絹
・100年残るのは丈夫な木綿

▶︎倉吉のあたりの食器は「染付」
・北前船で伊万里焼が運ばれてきた
・江戸中期から(古伊万里)

▶︎赤瓦は島根県、石見国から

▶︎戦時中も空襲がなかったので古い建物が残る

▶︎白壁の漆喰は自分で塗った
・ふのり+石灰(町のお店に材料が売っていた)
・100年たっても真っ白
・雨風にも強い

 

お母さんは、昔の食べ物や、旬の楽しみについても話してくれた。
気がついたら、日は傾いて夕方になっていた。

*  *  *

土地で使われる日用品は、流通が大きく関係していることを知った。
航路ができれば、遠くの土地の品が流れてくる。

もし、安くて良い品が大量に入ってきたら、地域の産業は様変わりするだろう。
私たちの生活は、そうやって、常に変わり続けてきたことを学んだ。

そして、それは現在も起きている。

 

半日まるっと付き合ってくださった、小島さん。

 

 

*  *  *

 

 

倉吉近くのゲストハウスに到着。ごそごそと、日記を書く。


この日、ゲストハウスでたこ焼きパーティーがあった。
そして、遠隔操作してくれていたゆみさんと初対面。
ハキハキとした、利発な女性だ。目がキラキラしている。

ツイッターで知り合った人達が温かいので、しみじみ「文字は人を表すなぁ」と思う。
ゆみさんと、後日、ゆっくり夕ご飯を食べる約束をした。

そして、11歳の読書友達ができた。
(オススメしてもらった本が届くのを、今待っているところ。)

 

歴史ロマンの城下町、倉吉。
鳥取が楽しくて、深呼吸。

明日も倉吉に行って、食べ逃した“たい焼き”を食べよう。
そして、お休みだったCOCOROSTOREさんを訪れよう。

お腹いっぱい、心いっぱい。

 

旅は、鳥取3日目、ふたたびの倉吉と白兎神社に続く。

もじゃ!

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